松原正明建築設計室 建築家 板橋区 設計事務所 OMソーラー そよ風 薪ストーブ 住宅.別荘 自然素材の家

都市部で薪ストーブを使う

10.jpg今、事務所では別荘と住宅の設計比率が半々。別荘のほとんどで薪ストーブを設置し、首都圏の住宅でも、その半分に薪ストーブを取り入れている。特別勧めているわけではないのだが、数多く薪ストーブのある家を設計し、わたしが実際に都内で薪ストーブを使っているためか、打ち合わせの時に興味本位でその使い勝手など聞いてくる。薪の手配が出来、置き場所さえあればそう大変ではないこと、そしてその特別な暖かさと炎のある暮らしの魅力を説明すると、竣工後多くの方が薪ストーブのある暮らしを始めることになるのである。

近隣への影響

ストーブに対する不安で、まず聞かれるのは近隣への影響。煙突から火の粉や煙が出てお隣に迷惑をかけるのではと思う方が多いが、これは薪ストーブの性能と薪の質次第である。北欧やアメリカから輸入されている薪ストーブは、それぞれの国ごとに厳しい排気基準がありそれをクリアしたものが日本に輸入されてきている。よく乾燥した薪を使えば、全く火の粉は出ないし、焚き始めこそ少々煙がでるものの巡航運転に入った薪ストーブの煙突トップからはゆらゆらと空気が動くのが見えるだけである。

安全性

次に聞かれるのは安全性。外出時や就寝時にも家の中で火が燃えているのをそのままにして火事の心配はないのかとの不安。これは使い始め頃はそう思うのだが、慣れてくると帰宅時や朝起きた時のために、出かける前と就寝前にむしろたっぷりと薪をくべるように変わっていく。実際に使ってみて初めてわかるのだが、灯油や電気のストーブよりずっと安心感がある。そのしっかりしたつくりと重量感は、たとえ地震がきてもびくともしないような印象に変わっていくのである。

使い勝手

薪ストーブを使うのは大変な手間がかかるものだと思っている方が多い。スイッチ一つで操作できるものではないから女性やお年寄りが使うのはむずかしいと思うのも無理はないが、実際に使うのはいつも家に居ることの多い女性で、24時間ストーブを焚き続けているという家も多い。就寝前に入れた薪が朝まで熾き火で残っているので、朝起きた時に一本薪を足してやるだけで簡単に着火し、薪ストーブのある快適な一日が始まるのである。

薪が大事

こんな具合に説明すると皆さん自分でも使える気になってくるのだが、市街地で薪ストーブを使うにはクリアしなければならない大きなハードルがひとつある。それは薪の調達と置き場所の確保である。薪を購入する方法もあるが、一束400円ほどの薪を一日に三束使うようだと相当な燃料費になってしまうので現実的ではない。公園の管理事務所に交渉し伐採された樹をゆずってもらう方、知り合いの植木屋や造成工事業者にゆずってもらう方、ボランティアで森林作業をしてもらってくる方などさまざまだが、薪を集めること事態を楽しむ気持ちがないと長続きはしない。また、一冬快適に薪ストーブを使うには想像以上の薪が必要になる。高さ2メートルとして幅はおよそ5メートルほど。それも薪として使うためには薪棚に積んで少なくとも一年は乾燥させなければならない。これは土地の狭い場所では相当な負担となる。薪ストーブを使うのに一番重要なのは、実は良い薪をたくさん確保することなのである。

薪ストーブの魅力

思ったほど大変ではないにしても、それなりに手間がかかり、毎年煙突掃除をしなければならない薪ストーブ。そして薪の調達と確保は大変な作業。それでもその魅力に惹かれ薪ストーブを使いたいという方たちが増えている。簡単、手軽、便利とはかけ離れた薪ストーブを望むのはなぜだろうか。体の芯から暖まることや家全体を暖房できるなど、他の暖房器具にはない良さを持ってはいるが、その魅力はなんといっても炎と共に暮らす生活にこそあるように思う。人はずっと昔から家の中で火を使い、それを中心に生活してきた。その記憶を失いたくない気持ちが薪ストーブというかたちになり、オール電化などで家の中から火が消えつつある今だからこそ、より強く薪ストーブに惹かれるのではないだろうか。